「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録にあたり
2024年12月5日、日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造りの知識と技術である「伝統的酒造り」は、日本酒、焼酎・泡盛、みりん等を生み出し、日本各地の気候や風土に応じて発展し、受け継がれてきました。
この度の登録は、全国の酒造関係者をはじめ、多くの皆さまの長期にわたるご尽力の賜物であり、心よりお祝い申し上げます。
新潟大学日本酒学センターは、日本酒に係る文化的・科学的な幅広い分野を網羅する世界初の学問分野「日本酒学」を構築し、その国際的な拠点を形成することを目的として、2018年4月に設立され、本年度で7年目を迎えました。広範な教育・研究分野から教員・専門家が参加し、日本酒に係る「教育、研究、情報発信、国際交流」に関する事業を展開しています。
特に教育の分野では、総合⼤学である新潟⼤学の強みを⽣かした「領域横断型の学び」、酒造会社等での実習や演習を取り⼊れた「主体的な問題解決型の学び」を提供しています。
学部生向けには教養科目として、「日本酒学A(概論)」、「日本酒学B(実践)」、「日本酒学C(研究の実践例)」を開講しています。従来の醸造学・発酵学にとどまらない幅広い視点をもち、⽇本の伝統的⽂化である⽇本酒を多⾓的に学ぶことができます。加えて、鹿児島大学、山梨大学との連携により、日本酒学はもちろん、焼酎学、ワイン学をも学べる「日本酒学D」の開講の準備も進めています(2025年度開講予定)。
また、新潟⼤学⼤学院 現代社会⽂化研究科/⾃然科学研究科において、2022年度から⽇本酒学プログラム博士前期課程、2023年度から⽇本酒学プログラム博士後期課程を開講しています。⽇本酒という対象を共通の軸として、⾃らの専⾨領域に加え、⽇本酒の原料・⽣産から販売・消費まで、さらには⽂化や歴史・伝統、健康に⾄るまでの幅広い多様な異なる領域を俯瞰した内容で、⽂理融合型の教育・研究を行っています。実習では、実験室レベルの酒造りに加え、新潟県醸造試験場での酒造りの工程を学び体験する実習なども提供しています。2024年3月には、日本酒学プログラム博士前期課程の第1期生として、7名の大学院生が修了しました。
今後も引き続きセンター活動の充実を図ってまいります。
「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録は、世界の人に日本酒を知っていただく、そして興味を持っていただくまたとない機会です。新潟大学日本酒学センターは、アカデミアの立場から、教育・研究活動を強化・推進することで、日本酒学の発展に寄与し、日本文化を継承する次世代の国際的⼈材育成に一層努めてまいります。
世界初の学問分野「日本酒学」、そして無形文化遺産である「伝統的酒造り」を学びに、ぜひ新潟大学へお越しください。
2024年12月5日
新潟大学日本酒学センター長
末吉 邦