Research

領域横断

文理融合による「薬酒」のベースとしての酒類利用をめぐる研究

【研究概要】

本研究は、酒類に食材・生薬を浸漬して造る「薬酒」を題材として、日本近世の文献調査と培養細胞による実験を主軸に、「薬酒」のベースとしての酒類利用の意義とその活用の可能性を問う、文理融合型研究である。
一般に酒類は、健康への負の効果が指摘されがちであるが、広く薬として認知されてきたのが「薬酒」である。特に近世の文献には、現代で言うところの清酒や、焼酎、味醂をベースとした「薬酒」が散見される。そこで、当時の文献に記載された「薬酒」の製法を参考に、それを模した溶液を調製し、培養細胞を用いた実験によってその効能を検証するという手法を主に、酒類と健康の関係に焦点をあてた研究を行っている。さまざまな研究分野の研究者との協働も取り入れながら、近世における酒類の健康面での意義、そして将来への活用の可能性について考察している。

Fig.1 『和漢三才図会』巻第百五(正徳2年〔1712〕序)における「薬酒」 個人蔵

 

Fig.2 「薬酒」に関する研究の一例。【写真左】は黒豆を用いて造る「豆淋酒」を模した溶液として、黒豆を各溶媒に浸漬して調製したもの。これを様々な培養細胞【写真右】に添加し、文献調査から見出された効能の検証を行っている。研究チーム撮影

【研究リーダー】

日本酒学センター 特任助教 畑 有紀

【チームメンバー】

日本酒学センター 特任助教 佐藤 茉美

【主要論文】

1)畑有紀・佐藤茉美・柿原奈保子(2022)「近世文献に見える薬酒を通じた清酒の健康効果の検討―「豆淋酒」を例として―」、『和食文化研究』(5)、pp.96-119, 2022年12月